ハウスメイキングラボ(住宅コラム)
Vol.96 「スーパーウォール工法(SW工法)」とは?【2024年版】
家づくりの一つに、「スーパーウォール工法(SW工法)」という手法があることはご存知でしょうか?デザインや耐震性、断熱性など住まいに求める機能はさまざまですが、このSW工法は既存の2つの工法の良い面を上手く組み合わせ、住む人にやさしい家づくりを実現しています。
家の構造は住宅選びの指標として関心が高まっており、工法などが明記されている物件も多く存在します。今回はこちらの工法の特性と、住む人にとってどのようなメリットがあるのかをご紹介します。
SW工法の大きな特性3つ
優れた断熱性
スーパーウォール工法は、日本の伝統工法である木造軸組工法と、ツー・バイ・フォー工法で知られている北米発祥の壁式工法のそれぞれの長所を組み合わせることで誕生しました。スーパーウォールとは、硬質ウレタンフォームを使用した気密性・断熱性が非常に高いパネルです。
(出典:経済産業省)
木造軸組工法でつくられた建物の天井・壁・床を、スーパーウォールを用いて囲むこと(以下“モノコック構造”)で、家全体が大きな魔法瓶のような働きをし、家の中の空気を外に逃がさない効果をもたらします。モノコック構造に加え、高断熱サッシ・高断熱ドアなどを採用して開口部の断熱性を高めることにより、夏は涼しく冬は暖かく、オールシーズン快適に過ごすことができるのです。
高い気密性
(出典:LIXIL)
優れた断熱性は、高い気密性があってこそ発揮されるものです。いくら断熱性能が高くても、隙間が大きければ温めた空気や冷やした空気はどんどん外気に漏れ出してしまいます。
(出典:LIXIL)
スーパーウォール工法におけるC値(相当隙間面積)の基準は、1.0。これは、家全体の隙間が、わずかハガキ1枚分ほどであることを指します。
気密性能を高めるだけでは室内環境が悪化してしまうため、スーパーウォール工法の家には“計画換気システム”が導入されており、家の中の空気をクリーンに保ちます。
災害に強い独自の構造
(出典:LIXIL)
一般的な木造住宅の場合、地震が起きた際に柱や筋かいに力が集中し、建物全体がねじれやすいというデメリットがあります。スーパーウォール工法では、独自の“モノコック構造”により家自体が箱のような状態になるため、外から加わる力が建物全体に分散されます。
また、使用されるパネルの耐震強度は「壁倍率4.3倍」の認定を受けています。これは建築基準法では木造最高水準です。通常の「壁倍率2.5倍」パネルと組み合わせることで、さらに効率よく災害に強い家づくりを実現しています。また、スーパーウォールパネルは、防火構造・準耐火構造における大臣認定を取得。耐震性に加え、防火性も備わった建材です。
SW工法による高機能住宅のメリット
家族が安心して暮らせる住まい
(出典:LIXIL)
スーパーウォール工法で使用されるパネルには、前述の大きな特性のほかにも優れた点があります。子どもの声や走りまわる音、ペットの鳴き声に楽器やオーディオの音などは、ご近所への音漏れが心配になりますが、こちらのパネルに使用されている硬質ウレタンフォームは優れた遮音性を持っているので、気になる生活音によるストレスが軽減されます。
光熱費の削減
(出典:環境省)
高気密・高断熱の家は、冷暖房効率が高いため、省エネにもつながります。スーパーウォール工法の住まいは、家の中の温度も一定に保たれやすいため、冬に足元が冷えたり、夏に顔が火照ったりすることも避けられます。吹き抜けや天井高のある空間も、光熱費や冷暖房効率を心配することはありません。
住む人の健康づくりをサポート
(出典:LIXIL、近畿大学建築学部 岩前研究室)
スーパーウォール工法でつくられた住宅には計画換気システムが導入されており、家全体の空気の流れをコントロールしています。例えば、2階戸建て住宅で概算すると、およそ2時間で家中の空気を完全に入れ替えることが可能で、換気フィルターが微細なホコリや花粉をカットしてくれます。使用されるパネルは吸湿性にも優れているので、カビ・ダニが発生しにくいというメリットも。これにより花粉症やアレルギーによる健康被害を軽減されることが期待できます。
(出典:LIXIL)
また、高気密・高断熱の家は家の中の温度が一定に保たれやすいことも特徴の1つです。部屋ごとの温度差が小さければ、ヒートショックや高血圧症も起こりにくくなります。
耐久力が高い
(出典:LIXIL)
住まいは、建てたときの性能が維持できるとは限りません。それは、結露や自然災害、経年などにより建材や資材が劣化していくからです。とくに建物の強度を下げる大きな要因となるのは、壁内結露。目に見えない壁の中で発生する結露です。
スーパーウォール工法の家は高性能な硬質ウレタンフォームを使用しているため、断熱性能が高いのはもちろん、耐水性が高く、湿気を通しにくいことから壁内結露を最大限抑えられます。
続く安心
家族の生活の基盤となる住まいは、永く安心し続けられる場所であるべきです。スーパーウォールの住まいは、全棟で気密測定を実施しており、性能報告書でC値が確認できます。加えて、設計時の熱計算によって算出された温熱性能や外皮性能も、報告書に明記されます。
断熱材内部の結露による劣化は、35年間保証。実際に築20年を迎えたスーパーウォールの家を解体した際には、居室から水まわりにいたるまでカビや結露の跡は一切ありませんでした。家を建ててからずっと安心が続くことも、スーパーウォール工法による住まいの大きなメリットの1つです。
SW工法で、住む人のさまざまな願いを叶える
日本に最も多い木造住宅は、細やかな技術で理想のデザインを形にできるといった特性があるものの、耐震性の弱さや気密性の低さが挙げられることがしばしばあります。スーパーウォール工法は、壁式工法を取りいれることでこのデメリットを克服し、デザイン性と快適さの両立、さらには高い安全性も実現しました。
住む人の快適さとは目には見えないものですが、この先ずっと長い時間を過ごすことになるマイホームにはとても重要なポイントです。住宅選びの際は、ご家庭のライフスタイルにはどんな家が快適なのかを想像し、家の構造という点に着目してみてはいかがでしょうか?
セイズは、デザインと機能性を両立させた
高耐震デザイナーズのZEH住宅を造り続けています。