ハウスメイキングラボ(住宅コラム)
Vol.10 耐震等級1・2・3でどう違う?耐震の基礎!【2024年版】
家を建てたり、購入する際、必ず話題に上るのが「耐震性」「耐震化」です。耐震とは、地「震」に「耐」えるための住まいの性能であり、地震大国である日本においては『50年に一度にくる!』大地震への備えでもあるのです。一般的な家づくりの条件では、地震に対する強さを重視される方が多いのですが、一方で、地震の際の強さが、建築にどう作用するかは、一般消費者にわかりにくかった状況が長く続きました。その反省から、良質な住宅を安心して取得し居住できるよう、一目でわかる住宅性能の表示基準として示されたのが「耐震等級(倒壊等防止、損傷防止)」でした。
参考までに、住宅の耐震性能の指標には、大きく耐震基準と耐震等級が存在します。建売住宅などの購入の際には耐震基準と耐震等級の違いを理解し、違法建築など耐震基準に適合していない建物を取得しないように気を付けなくてはなりません。とりわけ大地震時の構造躯体の強度を示す「耐震等級」は、地震の被害に見舞われることが多い日本では、家を建てる際に、必要不可欠な評価基準と言えます。言い換えれば「耐震等級」をより深く理解することが、安心・安全な家づくり・家選びのメリットにつながるわけです。
今回は、この「耐震等級」を中心に、耐震性の高い(=地震に強い)家のつくり方をご紹介します。
地震で倒壊しやすい家とは
ここ30年の間だけでも、阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)、新潟県中越地震、東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)、熊本地震、北海道胆振東部地震など、震度7を記録する地震に見舞われました。私達は、ニュースや新聞から、倒壊した住宅を目の当たりにし、被災の現実を突きつけられるのです。その被害を少しでも食い止め、来たるべき地震に備えるために、何を学ぶべきでしょう?まずは住宅が倒壊するメカニズムについて解説します。
たとえば木造戸建ての場合、地震の大きな力が住宅に加わると、大きく変形します。すると、柱と梁や土台が組み合わさっている部分(「接合部」)が外れたり、壊れてしまって、倒壊に至るのです。工法別の強度では、鉄骨造、RC造が耐震性に高く、木造がそれに続いてきます。ただし最近では、木造の耐震性も高くなっており、木造住宅の耐震性は鉄骨住宅の耐震性とそれほど変わらない水準にまでなっています。その背景には、2000年の建築基準法改正において、木造戸建ての耐震性が大幅に向上したことがあります。そのため、どの工法でも耐震性に不安を抱く必要はなくなってきています。
別の視点から、直下型の地震では、縦方向の揺れによって、柱が土台から抜けてしまったと考えられる事例もあります。また、強度を高めるため、木造戸建てなら筋交いや構造用合板で強化した「耐力壁」をつくります。この耐力壁が少ない、あるいは、壁の量は十分だけど配置のバランスが悪いと、柱や梁の変形が大きくなって柱や梁が破損しやすくなります。現在の建築基準法では、耐力壁の量やバランスを考えて建物をつくることが義務化されています。
耐震等級とは
改めて、耐震性の指標として、現在幅広く用いられているのが耐震等級です。耐震等級は、2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」で、施主に判りやすい耐震性の判断基準です。その耐震性能は等級1から等級3まで3段階に分けて表されます。等級1は、建築基準法レベルの耐震性能を満たす水準で、これ以下は危険というギリギリの耐震性能です。災害後に住み続けることは困難で、建替えや住替えが必要となることが多いです。等級2は等級1の1.25倍、等級3は等級1の1.5倍の強さがあると定義されます。一般的に等級が上がるほど柱や梁が太くなり、窓などの開口部が小さくなる制約が出やすくなります。では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
耐震等級1(建築基準法の耐震性能を満たす水準)
【耐震等級1(建築基準法で定められている最低限の耐震性能を満たす水準) いわゆる「新耐震基準」。
・数百年に一度程度の地震(震度6強から7程度=阪神・淡路大震災や2016年4月に発生した熊本地震クラスの揺れ)に対しても倒壊や崩壊しない
・数十年に一度発生する地震(震度5程度)は住宅が損傷しない程度
※建築基準法ギリギリに設定されている場合には、震度6~7程度の地震に対して損傷を受ける可能性がありますのでご注意ください。
気を付けたいのは、震度6~7の地震で「倒壊・崩壊しない」の一文です。これは「倒壊はしないが、一定の損傷を受けることは許容している」という意味なのです。住宅が倒壊すれば人命にかかわる問題になりますから、基準自体は正しいのですが、その後で補修や、損傷の程度によっては建て替えが必要になる可能性があることは知っておきましょう。
耐震等級2
耐震等級1の、1.25倍の地震に耐えられる性能・耐震強度の水準です。「長期優良住宅」では、耐震等級2以上が認定の条件とされています。また災害時の避難所として指定される学校などの公共施設は、耐震等級2以上の強度を持つことが必須です。
耐震等級3
等級3は、耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられるだけの性能・耐震強度水準です。住宅性能表示制度で定められた耐震性の中でも最も高いレベルであり、一度大きな地震を受けてもダメージが少ないため、地震後も住み続けられ、大きな余震が来ても、より安全です。災害時の救護活動・災害復興の拠点となる消防署・警察署は、多くが耐震等級3で建設されています。震度7の揺れが、立て続けに2回起こった熊本地震では、1度目は耐えたが2度目の地震で倒壊した住宅も多数あった中、等級3の住宅は2度の震度7に耐えていたことが、専門家の調査によって明らかになっています。
耐震等級2、3の家を建てるには
耐震等級3の建物なら安心と考えられますが、それだけでは不十分です。一番重要なのはしっかりと「壁倍率」などの構造計算を行っているか否かです。構造計算には種類があり、調べ方によって耐震性に差が生まれること知っておくことが大事です。ここが「しっかりとした」構造計算であるかどうかに関わってきます。
等級2以上、つまり耐震性の高い家をつくるには、次のような手段があります。
- 壁を強化:筋交いを入れる、構造用合板や耐力面材を使用する
- 床と屋根を強化:床に構造用合板を張る。軽い屋根材を使い、揺れにくくする
- 柱と梁の接合部を強化:接合金物を取り付ける
- 基礎を強化:ベタ基礎で、コンクリートを厚くする
- 梁の強化:集成材など強度の高い材を使う。金物工法によって木材の加工を減らす
壁を増やしたりすれば、当然ながら間取り(プラン)に制限が出る可能性もあります。また、コストも上がっていきます。
熊本地震でも「耐震等級3」の木造住宅は倒壊なし
3日の間に震度7の地震が2回観測された2016年の熊本地震では、建築物に甚大な被害が発生しました。しかし、耐震等級3の木造建築物の倒壊数はゼロ。建築基準法レベルの木造住宅は、わずかながらも倒壊や大破が見られています。
(出典:国土交通省)
熊本地震でとくに被害が大きかった益城町とその周辺地域では、木造住宅の実に15.2%(297棟)が倒壊・崩壊、11%(230棟)が大破しました。無被害だったのは、わずか21.2%(414棟)のみです。
ただ、上記グラフのように、建築時期=建築当時の耐震基準によって、倒壊・崩壊した割合や無被害だった割合は大きく異なります。
(出典:国土交通省)
現行の建築基準法に適合しているとされる木造建築物も、2.3%(7棟)が倒壊。4%(12棟)が大破しています。その一方で、耐震等級3の木造建築物にいたっては、倒壊も大破もゼロで、軽微な小破が2棟のみでした。このことから、旧耐震基準より新耐震基準、そして新耐震基準の中でも、耐震等級3の耐震性と安全性の高さが証明されたといえるでしょう。
地震保険料の「耐震等級割引」
耐震等級が高ければ高いほど耐震性は高くなり、住まいの安全性や安心感は向上します。また「安心」「安全」以外にも、耐震等級を上げることにより地震保険の割引が受けられるというメリットがあります。
地震保険とは?
地震保険とは、地震や噴火、またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失による被害を補償する保険です。地震保険は単体で加入することはできないため、火災保険とセットで加入します。
耐震等級割引
地震保険は、耐震等級に応じて割引が適用となります。割引率は、次のとおりです。
|
耐震等級1 |
耐震等級2 |
耐震等級3 |
割引率 |
10% |
30% |
50% |
なお、耐震等級割引と併用はできませんが、他にも免震建築物割引・耐震診断割引・建築年割引があります。
割引制度 |
割引の説明 | 割引率 |
免震建築物割引 |
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく「免震建築物」である場合 |
50% |
耐震診断割引 |
地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たす場合 |
10% |
建築年割引 |
昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合 |
10% |
耐震等級は家を建てる人が決める
法律上は等級1、すなわち建築基準法を守ればよく、等級2、3はあくまで任意の基準です。年々、耐震等級3の割合は増えていますが、分譲住宅やマンションの場合、ハウスメーカーや工務店、デベロッパーが事前に耐震等級を決めてつくるのが一般的。注文住宅では、メーカーや工務店が自社の基準や仕様を事前に定めていることもありますが、家を建てる方の希望に応じて設計してくれるケースもあります。
できれば、初めに建築士や営業の担当者に「耐震等級3で建ててほしい」などと、要望をきちんと伝えておくことが大切です。間取り(プラン)ができてから耐震等級を上げようとすると、壁が増えて理想のプランが実現できなくなってしまう可能性もあります。
東日本震災・熊本地震の教訓から、地震保険に加入する人も増えています。ただし保険に加入していても安心できないのが現実で、大地震の後も住み続けられる「強い家」とするには、耐震等級1では不十分です。地震で家が半壊したり大破した後、軽い補修で住み続けられる家と、倒壊は免れたが、半壊・大破し建て直さなければならない家とでは、住人からするとその後の人生・費用に雲泥の差があります。
最近では震度6強以上の地震が100年に1回どころか10年に1回の頻度で発生しています。つまり、震度6強以上の地震における建物被害まで防ごうとは考えていない建築基準法の最低性能では、「安心安全な人生を守るには足りない」と考えるべきでしょう。因みに、お客様のご家族の命と財産を守ることを企業理念とするセイズ・セイズホームが、耐震等級2~3を確保できるよう、設計段階から耐震性の確保に重点を置くのはこうしたリスクを正面から向き合うためです。
今後30年の間に、日本が大地震に見舞われる可能性はとても高く、地震が起こる場所は、人口密集地帯である首都圏・東海地方から四国・関西の南海トラフだとされています。首都圏のどこかで約70%の確率で起きるとされる「首都直下地震」も、いつが起きるか予知はまったく不可能なのです。
最後に、現行の耐震基準についてまとめると、抑えておくべきポイントは4つあります。
- 建物は軽いほうが耐震性がある
- 耐震の諦である耐力壁の量は、多いほうが耐震性がある
- 耐力壁や耐震金物は、バランスよく配置されていなければならない
- 床の耐震性能(水平構面)についてもしっかり検討する
手前味噌となりますが、セイズでは高い耐震性能に更に制震性能を加えています。
この制震性能の要となる制震テープについて詳しくはまたの機会にご紹介させていただきますが、簡単に言えば「家を丸ごとダンパーにする」「最大80%揺れを低減」するものです。セイズでは、制震テープも標準仕様としています。
耐震等級の知識を持つことは、自分が納得できる家づくりをする際に大切な要素です。家族と毎日をどう暮らし、どんな未来を思い描いているのかを、ご家族といっしょに是非じっくりと考えてください。大切な家族と過ごす住まいだからこそ、その安全性は、重要な基準になるはずです。そして「地震」からもご家族の命を守り、「地震後」の生活を守るなら、耐震等級2や3の家づくりはさらには「制震」「免震」に対応した家づくりは、さらに大きな安心材料となるのではないでしょうか。
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